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◆半分このたい焼き

朝からワクワクしていた。
初めて友達と一緒に行く雪祭り。

それまでは、親の付き添いが必須だった。
こどもだけで雪祭りに行くことは、学校から許されていなかった。

 

それがようやく、こども達で行っても良い学年になった。
親に付き添われて、何か困ることがあるわけじゃない。

それでもやっぱり、自分達だけで行けるというのは嬉しい。
ほんの少しだけ、大人として認められたような気がして。

 

朝から決めていた。たい焼きを買おうと。
雪祭りには、ちょっとした出店が並ぶ。

焼そば、たこ焼き、おでんなど、数は少ないけど、それも楽しみの一つ。
その中で、お小遣いの中から買えるのが、1匹100円のたい焼きだった。

 

氷で作られた滑り台を上っては滑り、滑っては上って。
何度も何度も繰り返した。

何度滑っても、飽きることはなかった。

 

大きな雪像に上るのは、ちょっと怖い。
上ったはいいが、降りれなくなる。

それでも友達の後に続き、少しだけ上ってみたり。

 

ゲームにも参加した。
思う存分楽しんだ。

さぁ、たい焼きを買って帰ろう。

 

それまでは気がつかなかった。
お店のほとんどが、店じまいを始めている。

閉まってしまったら大変だと、小走りでたい焼き屋さんまで急ぐ。
暖簾が下ろされようとしてる。

 

「たい焼き、ください」

 

あえて、「ありますか?」とは聞かなかった。
「ありません」と返されるのを、恐れたから。

でも、聞き方がどうであっても、答えは同じ。

 

「ごめんね、もう終わったんだよ」

 

もう、終わった。
ありません、と言われた方が、よかったかもしれない。

 

激しく後悔した。
もっと早く買っておけばよかった。

冷めてしまうけど、遊んでいる間に潰れてしまうかもしれないけど、
買えないよりはずっといい。

 

「冷たいのでもいいかい?」

 

パッと顔を上げた。
そこには一匹のたい焼き。

冷たくても何でもいい。たい焼きなら、何でも。

 

よかった。ちゃんと買えた。一匹だけだけど、しかたない。
本当は二匹欲しかった。お母さんと、お父さんの分。

お土産にしたかったのだ。初めて友達同士で行った雪祭りの記念に。

 

お母さんは喜んでくれた。
お父さんは褒めてくれた。

冷たくなったたい焼きは、電子レンジで生き返った。
ホカホカ湯気が立って、生まれたてのようだった。

 

頭はお父さん、尻尾はお母さん。
頭のてっぺんから尻尾の先まであんこが詰まっていることが、

あれほど嬉しかったことはない。

 

今、たい焼きが話題を呼んでいるらしい。
もちもち食感の白いたい焼き。

この間、ネットで見つけた。
買ってみようか、お父さんとお母さんに。

あんこは、頭から尻尾までぎっしり詰っているだろうか。