朝からワクワクしていた。
初めて友達と一緒に行く雪祭り。
それまでは、親の付き添いが必須だった。
こどもだけで雪祭りに行くことは、学校から許されていなかった。
それがようやく、こども達で行っても良い学年になった。
親に付き添われて、何か困ることがあるわけじゃない。
それでもやっぱり、自分達だけで行けるというのは嬉しい。
ほんの少しだけ、大人として認められたような気がして。
朝から決めていた。たい焼きを買おうと。
雪祭りには、ちょっとした出店が並ぶ。
焼そば、たこ焼き、おでんなど、数は少ないけど、それも楽しみの一つ。
その中で、お小遣いの中から買えるのが、1匹100円のたい焼きだった。
氷で作られた滑り台を上っては滑り、滑っては上って。
何度も何度も繰り返した。
何度滑っても、飽きることはなかった。
大きな雪像に上るのは、ちょっと怖い。
上ったはいいが、降りれなくなる。
それでも友達の後に続き、少しだけ上ってみたり。
ゲームにも参加した。
思う存分楽しんだ。
さぁ、たい焼きを買って帰ろう。
それまでは気がつかなかった。
お店のほとんどが、店じまいを始めている。
閉まってしまったら大変だと、小走りでたい焼き屋さんまで急ぐ。
暖簾が下ろされようとしてる。
「たい焼き、ください」
あえて、「ありますか?」とは聞かなかった。
「ありません」と返されるのを、恐れたから。
でも、聞き方がどうであっても、答えは同じ。
「ごめんね、もう終わったんだよ」
もう、終わった。
ありません、と言われた方が、よかったかもしれない。
激しく後悔した。
もっと早く買っておけばよかった。
冷めてしまうけど、遊んでいる間に潰れてしまうかもしれないけど、
買えないよりはずっといい。
「冷たいのでもいいかい?」
パッと顔を上げた。
そこには一匹のたい焼き。
冷たくても何でもいい。たい焼きなら、何でも。
よかった。ちゃんと買えた。一匹だけだけど、しかたない。
本当は二匹欲しかった。お母さんと、お父さんの分。
お土産にしたかったのだ。初めて友達同士で行った雪祭りの記念に。
お母さんは喜んでくれた。
お父さんは褒めてくれた。
冷たくなったたい焼きは、電子レンジで生き返った。
ホカホカ湯気が立って、生まれたてのようだった。
頭はお父さん、尻尾はお母さん。
頭のてっぺんから尻尾の先まであんこが詰まっていることが、
あれほど嬉しかったことはない。
今、たい焼きが話題を呼んでいるらしい。
もちもち食感の白いたい焼き。
この間、ネットで見つけた。
買ってみようか、お父さんとお母さんに。
あんこは、頭から尻尾までぎっしり詰っているだろうか。